ルスタル
今回の冬コミが初出展でしたが、コミケに行くこと自体は16年ぶり2回目でした。僕がなんで16年前にコミケに行ったかというか、この号の宣伝のためです。
僕の『デザインの現場』編集長としての最後の仕事です。特集「コミックスの芸術家たち」。そのビラをまきに行ったんです。まだ会場は晴海でした。営業担当と二人で、朝並んで入場し、出展者にビラを手渡ししました。今はそんなゲリラ的なビラ配りをしたら運営から確実に追い出されてしまいますね。企業出版社の宣伝ですから、けっこう嫌われたりしましたが、「えっメビウス! えっビラル!! BDの情報少ないんですよね。絶対買います」って励まされたりしました。
この号は、パリに行ってBD(フランスのマンガのこと)作家を取材しました。メビウス、エンキ・ビラルのインタビューを同時にとれたことは奇跡的だと思ってます。
ほんと二人はスターでした。シャルル・ドゴール空港に着いて、書店を見たら、ビラルの新刊がいちばん目立つところでズラーッと並んでましたから。僕らはなんて人にこれからインタビューするんだろって思いました。
他にBD作家はルスタル、エマニュエル・ギベール、ボードワンを取材。イギリスにも行って若手コミックス作家デイヴ・マッキーンのインタビューもしました。ケント地方の美しい田園風景が今でも眼に焼きついています。
特集以外に、絵本作家M.B.ゴフスタインの取材記事もあったり、今見てもスゴい号だと思います。
スゴいと思って、これは売れると会社を説得して、刷り部数を増やしました。で、どうしても売らなくちゃと、晴海のコミケ会場へ行ったんです。
結局この号は、ヒットしませんでした。ヒットしない号は、結局何かがダメで、後から考えると、それが目立って、あまり好きになれません。実際内容のいいと自負した号は、すべて売れましたし。しかし唯一の例外が、この号です。
Moubius
メビウスの頁です。いい写真なんですよね。フランス人写真家ファビュアン・モンテュベールに撮ってもらったのです。表紙もメビウスです。パリ在住の桜井さんがコーディネイションとライティングをしてくれました。彼女の粘りがなければ実現しなかった号です。
Enki Bilal
右頁のエンキ・ビラル写真。これもモンテュベールの撮影。のちに『ブルータス』の表紙になります。ホテルのロビーで撮ったものです。ここのホテルなら何にも言われないでインタビューできるよってビラルが言って。ホテルに許可を撮ることも、お茶を頼むことなく、その場で取材して。ビラルと気づいた人が遠巻きでわれわれの取材を見てました。
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年末年始もなく原稿書きなのですが、急遽3日目も行ってきました。コミケに。人から評論ジャンルのある3日目に出したほうがいいと言われて、その視察に。ウンたしかにそうですね。客層が1日目とぜんぜん違いました。1日目は塩味鶏スープ、3日目は豚骨背脂スープ全部入りって感じですね。僕はCAMUIロケットの打ち上げの模様をレポートした小冊子を買いました。去年AXISで取材しましたから、親近感があって。つい手にとってしまう、つい買ってしまう。この「つい」をどうつくるか。難しいですね。
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text & photo by Keiichiro Fujisaki
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